「10年近く前に作ったホームページが恥ずかしくて、名刺に載せるのを止めた」
これは、知人の紹介で相談を受けた関東の産業機械部品メーカーA社(従業員約15名)の経営者が最初に言った言葉だ。
私(中山)はアクセンチュア出身後に独立し、現在はAIを活用したホームページ制作を中小B2B企業向けに手がけている。今回は、実際にA社のサイトをAIで制作した全プロセスと結果を、可能な範囲で公開する。
(確認・修正込み)
クライアント実質負担額
(トップ・会社概要・製品・採用等)
(旧サイトは非対応)
きっかけ:「10年前のサイトをどうにかしたい」という相談
A社は関東に拠点を置く産業機械部品の製造業者だ。自社で設計から製造まで手がける技術力は本物だが、ウェブでの情報発信はほぼゼロの状態が続いていた。
旧サイトはFlashを使った静的ページで、2014年頃に知人のウェブデザイナーに依頼して作ったもの。スマートフォンへの対応はなく、Googleの検索にもほとんど引っかかっていない。「見積り依頼のほとんどが同業他社からの紹介か展示会」という営業スタイルで、ウェブからの問い合わせはほぼゼロだった。
「制作費が100万〜200万円かかると聞いて諦めていた。補助金が使えるなら話が変わる」というのが最初の反応だった。
制作前(Before)の状態:3つの根本的な課題
まず旧サイトを分析した。問題は大きく3つに集約された。
Before(旧サイト)
- スマホ非対応(PC専用レイアウト)
- トップページがテキストのみ、写真なし
- 製品情報が箇条書きだけで特長が伝わらない
- 問い合わせ先がメールアドレスのみ(フォームなし)
- Googleマップ・所在地の掲載なし
- 会社概要が最終更新2015年のまま
- SSL非対応(http://)
After(新サイト)
- 完全スマートフォン対応
- 製品・工場の写真を大きく掲載
- 製品ページに仕様・強み・用途を整理
- 問い合わせフォーム設置(自動返信あり)
- Googleマップ埋め込み・アクセスページ
- 会社情報を最新化・採用情報ページ追加
- SSL対応(https://)+ 常時リダイレクト
中でも深刻だったのが「問い合わせ動線がない」という点だ。メールアドレスを直接書くだけでは、スパムを恐れてそもそも連絡しない人が多い。フォームがあるだけで問い合わせ率が数倍変わるというのは、BtoBサイトでは一般的に知られた事実だ。
AIサイト制作の実際のプロセス:3日間でどう進めたか
今回の制作で使った手法は「既存サイトの解析→AIによる書き換え→デプロイ」という3ステップだ。フルスクラッチで作るのではなく、既存のコンテンツとブランド資産を活かしながらAIで再構成する。
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Day 1
既存サイトの解析・コンテンツ抽出
旧サイト全ページのHTMLをスクレイピング。テキストコンテンツ(会社概要・製品情報・連絡先)、ナビ構成、ブランドカラーを抽出した。この工程は完全自動化されており、約15分で完了した。A社が用意したのは「会社概要の最新版(Word1枚)」と「製品写真5点」のみ。 -
Day 2
AIによるHTML書き換え・全ページ生成
抽出したコンテンツをもとに、AI(Claude Sonnet)がトップページ・会社概要・製品ページ・採用ページ・お問い合わせページの計5ページをHTMLで生成。各ページに問い合わせCTA、スマホ対応CSS、Googleマップ埋め込みを自動実装した。生成は約40分で完了。私が1時間かけて内容を確認・微調整し、A社の経営者に確認用URLを送った。 -
Day 3
確認・修正・本番デプロイ
A社から「製品ページの仕様表の列を1つ増やしてほしい」「採用の条件が変わった」という2点の修正指示が届いた。修正はAIに再指示して20分で完了。Cloudflareに自動デプロイし、独自ドメインへの切り替えを案内した。SSL設定も自動で完了。
制作でA社が準備したのは3点だけ:①会社概要の最新版(Word1枚)② 製品・工場の写真5点 ③確認時のフィードバック2点。これ以外の作業(デザイン・コーディング・サーバー設定・SSL)はすべてAIと私が担当した。
制作後(After):Before/Afterの全比較
完成したサイトをA社の経営者に見せたとき、「本当にこれが3日でできたのか」という反応だった。以下に主な変化を整理する。
| 評価項目 | 旧サイト(Before) | 新サイト(After) |
|---|---|---|
| スマホ対応 | 非対応 | 完全対応(レスポンシブ) |
| ページ構成 | 3ページ(トップ・会社・製品) | 5ページ(採用・お問い合わせ追加) |
| 問い合わせ手段 | メールアドレスのみ | フォーム+メール+電話 |
| SSL(https) | 非対応 | 対応済み |
| 写真・ビジュアル | ほぼなし | 製品・工場写真を各ページに掲載 |
| Googleマップ | なし | 埋め込み+アクセスページ |
| 製品情報の構造 | 箇条書きのみ | 仕様表・特長・用途を整理して掲載 |
| 表示速度(PageSpeed) | 未計測(旧式コード) | PC 92 / モバイル 87(静的HTML) |
A社の経営者からは「今まで展示会でしか渡せなかった会社案内が、URLひとつで代わりになる」というコメントをもらった。名刺のQRコードに新サイトのURLを入れることになり、次回の展示会から活用する予定だという。
費用の内訳と補助金活用:実質負担はいくらか
今回の制作費と補助金活用の内訳を公開する。
| 項目 | 金額 | 補足 |
|---|---|---|
| ホームページ制作費 | 500,000円(税別) | 5ページ・フォーム・SSL・1年保守込み |
| 小規模事業者持続化補助金(最大補助) | △333,000円 | 補助率2/3・上限50万円(参考値) |
| クライアント実質負担 | 約167,000円〜 | 補助金採択を前提とした概算 |
| 月次保守費(2年目〜) | 月額15,000円〜 | コンテンツ更新・障害対応込み |
※補助金の採択率・補助額は申請内容・審査状況によって変動します。また補助金は後払い(採択通知後に制作→納品→精算)のため、一時的な自己負担が発生する場合があります。詳細は地域の商工会議所または弊社にご相談ください。
補助金活用の現実:小規模事業者持続化補助金の採択率は例年60〜80%前後です(令和5年度参考値)。採択されなかった場合でも制作費50万円は変わりません。「補助金が前提」ではなく「50万円の価値があるから発注し、補助金はボーナス」という判断軸を持つことをおすすめします。
中小製造業がAI制作で得られる3つの価値
今回の制作を通じて、AI活用による中小製造業向けサイト制作の強みが3点明確になった。
1. スピード:「急いで作る」ではなく「着実に早い」
3日という期間は「突貫工事」ではない。AIが既存コンテンツを解析して構造を設計するため、ゼロから考える必要がない。通常の制作会社が2〜3ヶ月かける「ヒアリング→設計→デザイン→コーディング」の多くをAIが並列処理する。
2. コスト:価格ではなくコスト構造が違う
弊社の制作費50万円は「安さ」で勝負しているのではない。コスト構造が根本的に異なる。通常の制作会社は人件費が原価の大半を占めるが、AIが作業の多くを担う弊社の原価はAPIコストと確認工数のみ。その差額をクライアント価値(スピード・保守)に還元している。
3. 継続性:納品して終わりではなく、運用まで伴走する
A社のケースでも、「採用ページの内容を変えたい」「新製品のページを追加したい」という要望は納品後にも発生する。月次保守契約により、こうした更新をLINEで依頼できる体制を整えている。ホームページは「作って終わり」ではなく「運用してはじめて資産になる」ものだ。
まとめ:AI時代のホームページ制作で変わること
今回の事例で明確になったことがある。ホームページ制作における「時間・費用・品質」のトレードオフは、AIによって根本的に変わりつつある。
A社のような中小製造業にとって、ホームページはもはや「あると良いもの」ではなく「営業の基盤インフラ」だ。展示会での名刺交換の翌日、取引先の担当者は必ずサイトを確認する。そこに10年前のページが表示されれば、それだけで信頼が損なわれる。
AI制作によって、今まで「コストと時間の問題で後回し」にされてきた中小企業のデジタル刷新が、現実的な選択肢になった。この変化は、ここ1〜2年で起きていることだ。
「うちのサイトも古いかもしれない」と思ったら、まず現状の診断から始めることをおすすめする。弊社では無料のサイト診断と補助金活用シミュレーションを行っている。